『君のお金は誰のため』【 本の要約 】
お金に関する本質的な話が詰まった一冊、『君のお金は誰のため』を読みました。本書は読者が選ぶビジネス賞グランプリ2024の総合グランプリにて見事第一位を受賞した作品です。
お金に振り回されていたのか、はたして奴隷だったのか。「何のために働いているの?」と、あなたも思ったことはないでしょうか?
小説形式で読みやすく、物語自体も話が面白くサクサクと読み進められ、しっかりとお金の知識が身につきます。
この「お金の正体」を知っておくことで、あなたの考え方や行動は大きく違ったものになってくるはずです。
田内さんを知りたい方は、こちらもうぞ。
「あらすじ」と私が心に残った話を2つほどピックアップし、まとめていきます。
あらすじ
物語の主人公は、中学2年生の『優斗(ゆうと)』。 お金の知識はない、ごく普通の中学生で、「将来は年収の高い仕事に就きたいな」と漠然と考えていました。しかし、進路指導で先生から「社会のために何ができるかを考えろ。お金より大事なものがあるだろう」と言われ、納得できずにいました。周りの大人はみんなお金に困っていて、お金のために働いている──それを見てきた優斗にとっては、お金こそ大事だと感じていたのです。
そんなある雨の日、投資銀行員の『七海(ななみ)』と出会います。七海は上司の命令で、ある屋敷でお金の勉強をするよう言われて訪れたところでした。その屋敷には「お金を簡単に増やすボス」と呼ばれる錬金術師が住んでいるという噂がありました。
優斗と七海が屋敷に入ると、ボスは投資の儲け話はせず、「お金そのもの」について語り始めます。そして屋敷の本当の価値を理解させるために「この屋敷を渡す」と告げ、2人にお金の正体と社会の仕組みを教えていくのです。
ボスが教える「お金の正体」
ボスが突きつけたのは、人々が陥る3つの誤解です。
- お金自体には価値がない 紙幣は政府や中央銀行の信用で成り立ち、税制度によって流通しているだけ。物やサービス、労働があって初めて意味を持ちます。
- お金で解決できる問題はない 無人島や災害時など、労働力がなければお金は無力です。問題を解決するのはお金ではなく「働く人」です。
- みんなでお金を貯めても意味がない 個人にとっては貯金は有益でも、社会全体で見れば価値を損ない、インフレや経済停滞を招きます。
働くとは誰かの役に立つということ
この世界の商品はすべて働く多くの人達の”労働”によって形つくられています。
そしてその商品にお金を払うということは、私達がその商品に対して役にたつと感じているから。
つまり、私達が働いていることは名前の知らない誰かの役に立っているということにつながっています。
私達が一日を過ごすとき、本当に多くの人の労働のおかげで豊かに生きることができます。逆に自分が働くということは、多くの方々(見ず知らずの方々含めて)の役にたっているということになります。
このように、自分ではできないことを誰かに解決してもらって、その代わりに自分が誰かのできないことを解決し合っていることになります。この循環によって、私たちひとりひとりの生活が豊かになる。
本書では、この循環を「経済」とよんでいます。
僕たち大人の多くはどこかの会社に所属し、そこで労働力を提供する代わりに報酬として給料をもらっています。
僕たちは働いてからお金をもらうのではなく、人の悩みを解決したから自分のところにお金が返ってきている。人の悩みを解決したら、お金を受け取れる。
つまり、お金を稼いでる人はより多くの人の悩みを解決するために行動したということになります。
これは、まずお金を稼ぐ上で知っておくべきことです。
多くの人の格差をなくし便利にする人が結果的にお金持ちになっているということです。自分がお金持ちになりたいのであれば多くの人を豊かにする方法や格差をなくす方法を考えることが重要になります。

内側と外側でお金を考えること
お金は社会全体で見ると、個人で見るのとは違う景色があるということがわかります。
『大前提として、日本という国では発行されているお金の量は約120兆円であり、それ以上お金は増えないようになっています。』 本書より
私達がお金を使うときはその120兆円という決まった金額のなかで「政府・企業・個人」という3つの財布の間で、ただ移動したということです。
日本の会社が日本に所属している人に商品やサービスを売ったところで、そのお金は国内の誰かから誰かに移動しているだけになります。
つまり、日本円の総量自体は増えておらず、お金が人から人へ移動してるだけになるのです。
お金の総量は変わらないので、人気のある人にお金が集まっているのです。
国が借金をして道路を作る場合は、国の内側にいる人が働いています。
本書(p180)
日本政府がとても大きな借金を抱え入れていることは、多くの人が知っていることかと思います。その額およそ1200兆円といわれています。「ピン?」とこない金額ではありますが、一人当たりに直すと1000万円程度の借金があるということになります。
ここでよく叫ばれる事は昔の借金を現役世代がなぜ返さなくてはならないかということ。
国が借金をして道路や港や橋をつくる場合、そのお金は国の内側にいる人や企業の口座に入ることになります。国の借金のマイナス分は、個人や企業の預金のプラスとなっており、全体で見れば帳消しになっている。
家庭の借金の場合は、家庭の外側の人にお金を払って働いてもらう。国の借金の場合は国内にいる人が働いている。つまり国の借金を受けて、働いているのは自分たちだけであるということ。日本の借金の構造が理解できますね!
国は1200兆円もの借金を抱えていますが、実はその借金は日本国内の会社や個人のもとに流れ込んでいるという話です。日本が借金をしたところで、国内の会社に仕事を依頼するのであれば、その借金は日本国内の中で巡回されていく仕組みだということがわかります。
まとめと感想
『君のお金は誰のため』は、小手先のテクニック本ではなく「お金の本質」をきちんと解説してくれる本でした!
数字の話などはほとんど出てこないので、数字に苦手意識を持つ方もしっかり理解できる内容になっています。
「私たちは何のために働くのか」を考え続ける必要があります。
『君のお金は誰のため?』は、経済やお金の仕組みをわかりやすく学べるだけでなく、人生の価値観にも影響を与える一冊です。最後は少し泣ける感動ストーリーになっており、読み終えた後には「お金との向き合い方」が変わるはず。
「お金の本質を知りたい」「働く意味を考えたい」という方に、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

人を中心にお金を考え、お金の本質について学ぶことができる一冊でした。