生きるとは、自分の物語をつく ること 【 本の要約 】

ひろし

あなたは今、どんな物語を生きていますか?

年齢を重ねるにつれ、華やかな成果や地位よりも、その人がそこに至るまでの紆余曲折や、静かににじみ出る生きざまに心惹かれることが増えました。
50代が近づいた今、そんな「深く生きている人」の言葉や行動に、ふと足を止めてしまうことがあります。

そんな折に出会ったのが、小川洋子さんと河合隼雄先生の対談集『生きるとは、自分の物語をつくること』。
小川洋子さんは『博士の愛した数式』(読売文学賞)で知られる小説家。河合隼雄先生は、日本におけるユング派分析の第一人者です。

本書の表題となった対談は、河合先生が亡くなる一ヶ月前に行われたものでした。
小川さんは、次の対談を心待ちにしていたそうですが、巻末の「少し長すぎるあとがき」には、その人柄や対話の裏側が温かく綴られています。

魂と魂がふれあう人間関係とは?

小川さんが引用した河合先生の言葉が、心に残ります。

「お互い限りある人生なんだ、必ず死ぬもの同士なんだという一点を共有していることが大事」

この意識があれば、80分でも80年でも、過ごすひとときは永遠につながる──
だからこそ、今この瞬間を大切にできる。
一期一会の出会いの中で「私はこの人のために何ができるか」を問い続けたい。
そこから、お互いの物語が紡がれていくのだと感じます。

「個」を大きな流れの中で考える

河合先生はこうも言います。

「その矛盾を私はこう生きました、というところに個性が光る」

矛盾とどう折り合いをつけるか。そこにこそ、その人らしさが表れる。
それは自然科学では説明できず、物語としてしか語れない──
そして、その物語こそが、個人を支える土台になる。

私はこの言葉を読み、ハッとした。
これまで「将来何になりたいのか?」「何のために生きるのか?」と問われるたびに答えに躊躇していて、不安だけが心の中にありました。
でも、答えは“はっきりした目的”ではなく、自分なりに矛盾と向き合い、その歩みを物語として生きることにあるのかもしれないと感じたのです。

死と物語の関係

あとがきで小川さんはこう記しています。

いくら自然科学が発達しても、私の死や親しい人の死の恐怖や悲しみは解決されない。
そのために物語が必要になる。
死に続く生、無の中の有を思い描くことで、ようやく死と折り合いをつけられる。
物語を持つことで、人は自分を一つに統合できる。

この「死を見据えて物語を紡ぐ」という視点は、日々をただ過ごしてしまいがちな私たちにとって、強い指針になります。
人は死に向かって生きている──その事実を受け入れたとき、矛盾を抱えたままでも、自分の物語を最後まで描き切る覚悟が生まれるのではないでしょうか。

私の意見

あなたが歩んできた道はどんな物語を紡いでいますか

あなたが歩んできた道、悩み、喜びや涙の瞬間は、すべて“あなただけの物語”です。それは他の誰かにとって救いや希望、共感になることがあります。

特に「誰にも言えなかったこと」や、痛み・恥ずかしさ・過去の失敗などは、物語として人々に深みを与えます。人は完璧な成功よりも、どん底から立ち上がる話に心を動かされます。弱さや迷いも含め、すべてが語るに値する要素だからです。

人生はまだ続く「未完の物語」。これまで歩んできた過去にも、これから紡ぐ未来にも、意味と価値があります。どうか自分の物語を信じ、大切に語ってください。それはあなただけが記せる、かけがえのない人生の記録なのです。

あなたの物語は、今どこまで進んでいますか?
これから先、どんなページを描いていきますか?

記事URLをコピーしました