『これからの「正義」の話をしよう』をわかりやすく解説|正義とは何か?3つの視点で徹底整理
ニュースやSNSを見ていて、「これって本当に正しいの?」と感じる瞬間はありませんか。多数の意見が強く見えたり、誰かが断定的に“正解”を示したとき、私たちはついその判断を受け入れてしまいがちです。
こうした問題意識を土台に、マイケル・サンデル教授はハーバード大学で「正義とは何か?」を問う講義を行いました。その内容をまとめた世界的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』です。
本書は、私たちの日常に潜む“価値判断のクセ”を可視化し、自分の頭で考える力を鍛えてくれます。
この記事では、本書の要点と代表的なケースを整理し、あなた自身の「正義」を言葉にするヒントを紹介します。今日から、自分の正義について考える一歩を踏み出しましょう。
正義は“答えのない問い”から始まる
私たちは日々、「正しい」と思う選択を繰り返しています。しかし、その正しさは誰の基準に基づいているのでしょうか。 マイケル・サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』は、単純にみえて本質的な問いを投げかけます。
本書は、「絶対的な正解はない」という前提から始まり、考え続けることそのものの重要性を強調します。正義とは完成された概念ではなく、「議論・対話・再考」のサイクルの中で更新されていくものなのです。

正義を考えるための入口:生々しいケーススタディ
サンデルは抽象論ではなく、次のようなリアルな問いから議論を始めます。
- 一人を犠牲にすれば五人が助かるなら、レバーを切り替えるべきか?
- ハリケーン後、物資の価格を大幅に上げるのは不道徳か?
- 前の世代が犯した罪に、今の世代はどこまで責任を負うべきか?
こうした問いには、明確な正解がありません。それでも「判断しなければならない」。 その葛藤こそが、正義を考える第一歩となります。

3つのアプローチで「正義」を整理する
サンデルは正義の考え方を3つの軸に分類します。
① 幸福の最大化(功利主義)
「なるべく多くの人が幸せになる選択が正しい」という考え方です。分かりやすい一方で、少数の犠牲を正当化してしまう危険があります。
漂流中の船員事件では、少年1人を犠牲にして3人が助かりました。数字で見れば“合理的”に見えるかもしれません。しかし、私たちは直感的に「それでもやってはいけない」と感じます。功利主義の限界が表れている一例です。
② 自由の尊重(リバタリアニズム)
「個人が自分の人生を自由に選べることが正義」という立場です。自由を最大限尊重するため、国家による課税や規制にも反対します。
ただし、極端になると「臓器売買も本人の自由」という危険な発想に繋がります。
③ 美徳の促進(共同体的正義)
「人は共同体の一員であり、歴史的責任や連帯を引き受ける存在だ」という考え方です。親が子どもの行動に責任を取ったり、チームで上司が部下の責任を負ったりするのは、この視点に近いものがあります。
ただし、共同体の価値を優先するあまり、自由が失われるリスクもあります。

どの正義にも欠点がある。だからこそ「考え続ける」こと
3つの立場を比べると分かるのは、どの正義にもメリットとデメリットがあるということ。だからこそ、ひとつの正義だけを信じて思考停止におちいってしまうのは危険です。
サンデル教授が伝える核心は、「正義について考えることをやめるな」というメッセージです。

自分の「正義」を言葉にしていく
正解を求める必要はありません。あなたの経験・環境・価値観から生まれる“あなたの正義”を、一度言葉にしてみること。誰かに反論されたら、そこから考え直せばいい。その対話こそが、共同体における民主主義の基盤となるのです。

まとめ:あなた自身の「これからの正義の話」を始めよう
- 正義に絶対的な答えはない
- 大切なのは、考え・議論し・問い続ける姿勢
- 功利主義・自由・美徳、それぞれが“部分的な正義”を持つ
- 自分の正義を言葉にし、対話で磨いていくことが成熟した社会をつくる
今日から少しだけ、「正義」について考える時間を取ってみませんか。その一歩が、あなた自身の「これからの正義の話」の始まりになります。
